技術士の技事録

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ST H22秋 午後Ⅰ 問1

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卸売業者における物流センタの統合による業務改善に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 A社は,化粧品や日用品の卸売業者である。顧客は,ドラッグストア,スーパなどの小売業者である。当初は,A社の所在地に物流センタを設置し,周辺の顧客への卸売業務を始めた。その後,顧客の出店拡大や自社の営業部員による新たな顧客獲得によって,営業地域を近県に拡大していった。それに伴い,顧客への配送サービスを考慮し,各県に物流センタを展開してきた。現在では,一つの県の中にも複数の物流センタを設置し,顧客へのサービス向上に努めている。
 それぞれの物流センタには,自社で開発した在庫管理システムを導入しているが物流センタ間のシステム連携は行っていない。在庫管理システムでは,商品の品目と数量を管理している。一方,本社には,顧客からの受注を管理する販売管理システムを導入している。営業部員は,顧客から注文を受けて,受注情報を販売管理システムに登録する。販売管理システムでは,1日分の受注情報をまとめて,顧客を担当するそれぞれの物流センタに送信する。販売管理システムと各物流センタの在庫管理システムは連携していないので,現在はオンラインで在庫を確認することはできない。

物流センタ業務の現状〕
 物流センタでは,受注情報に基づいて顧客ごとに出荷指示書を作成し,在庫を引き当て,商品を出荷している。
 物流センタごとに各商品の安全在庫の基準値を設定し,それを下回った場合には,メーカに補充発注を行い,安全在庫数量を確保している。安全在庫の基準値に余裕をもたせる物流センタもある。一方で,商品の補充が間に合わずに,欠品を起こすこともある。欠品時には,物流センタの責任者が近くにある複数の物流センタに問い合わせ,在庫があれば自己の物流センタに配送してもらう。問合せ先にも在庫がなければ,顧客に欠品になっている旨を連絡する。
 物流センタでは,出荷指示書に基づいて商品を出荷しているが,顧客への納品時に商品の品目や数量が誤っているというクレームを受けることがある。顧客への配送は,運送会社へ委託している。納品時刻は,顧客の要望に合わせて午前又は午後の時間帯で指定している。

〔顧客の要望〕
 顧客からは,商品の出荷に関して,次の要望がある。

  • 注文時に欠品が見込まれる場合には,その時に連絡してほしい。
  • 化粧品は,前回のロットよりも古いロットの商品が出荷されることのないように管理を行ってほしい。

 顧客は,商品が納品されると,店頭やバックヤードで作業者が検品作業を行う。検品作業では,自社の発注伝票とA社の出荷伝票に基づいて,商品現物の品目と数量を認する。検品作業の効率を改善するために,次の要望がある。

  • 作業者のスケジュール管理を容易にするために,納品時刻を一定にしてほしい。
  • 店頭での検品作業を,現物確認ではなく発注伝票と出荷伝票の突合せによる作業にし,作業負荷を軽減したい。

〔化粧品メーカの要望〕  一方,A社の取引先である化粧品メーカは,製品出荷後のトレーサビリティ管理の強化の要望をもっている。メーカは,製造者としてのトレーサビリティ管理を導入しており,製品に製造ロット番号を付け,その順に出荷している。卸売業者への出荷までの製品情報は管理できているが,卸売業者から小売業者へ出荷した数量などの情報はない。消費者の商品への意識の高まりから,製品に問題が発生した場合には対応を急ぐ必要があるのに,対応範囲が特定できない。

〔物流業務の見直し〕
 今回,メーカや顧客の要望にも対応し,両者の満足度向上と,A社の競争力の強化を図るために,次の方針で物流業務の見直しを行うことにした。

  • 各県に物流センタを展開してきたが,管理費が経営を圧迫してきたので,物流センタの統合及び外部への業務委託を行う。

 今回の見直しでは,物流センタは,業務を委託する会社の設備を利用し,1か所に統合する計画である。また,自社の販売管理システムを改修し,業務委託先の在庫管理システムと接続して在庫情報を即時に参照できることを条件に追加した。  業務委託の検討を行う際に,倉庫業のB社と運輸業のC社に提案を求めた。両社の提案は次のとおりであった。

〔B社の提案〕
 B社で運用している在庫管理システムを使用する。配送は,B社が契約している運輸業者に委託する。商品の在庫管理は,品目,数量,製造ロット番号で行い,A社と同じ方法で商品を補充する。商品の出荷管理は,製造ロット番号と出荷日付によって行い,出荷日付,納入先,製造ロット番号,数量の情報を保存する。B社が契約している運輸業者では,配車担当者が配送順と納品時刻を決定している。現状の午前又は午後の時間帯指定の配送は可能であるが,配車担当者のスキルによっては,納品時刻を一定にすることは困難である。

〔C社の提案〕
 C社で運用している在庫管理システムを使用する。配送はC社の運輸部門が行う。運輸部門では,配送順や希望納品時刻を制約条件とするトラック配車計画システムを運用している。配車担当者のスキルによらず,適切な配車計画が作成でき,希望納品時刻どおりの配送が可能である。
 なお,C社から提案された商品の在庫管理と出荷管理は,A社で評価した結果,B社と同等である。

〔物流に関する指標について〕
 両社の提案では,物流センタの在庫管理と出荷管理の業務内容と受託する料金は同等であった。A社では,顧客の要望を実現できるC社の提案を採用することに決めた。C社と契約を結ぶ際に,物流品質の維持・向上を図るために,欠品,誤納品,メーカ返品などに関する物流指標を決めた。この指標の中でも,顧客の検品作業の改善に関する要望に対応するための指標を,特に重視した。

 

設問

設問1

 物流センタの統合による物流業務の見直しについて,(1),(2)に答えよ。

(1)商品の在庫数量の管理面で改善できることを,30字以内で述べよ。

(2)顧客へ出荷する商品の管理面で改善できることを,30字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)安全在庫を集約することで,在庫数量を削減できる。

(2)製造ロット番号を活用し,ロット番号順に出荷する。

解説

(1)

(2)

 

設問2

 物流センタの業務委託について,(1),(2)に答えよ。

(1)業務委託先をB社ではなく,C社に決定した理由を,20字以内で述べよ。

(2)検品作業に関する顧客の要望に対応するために,物流品質に関して特に重視すべき指標を答えよ。

 

 

解答例

(1)納品時刻を一定にできるから

(2)誤納品の発生件数

解説

(1)

(2)

 

設問3

 A社がメーカと顧客の満足度を向上させるためにシステムを活用して行うべきことについて,(1),(2)に答えよ。

(1)メーカの要望にこたえるために行うべきことを,40字以内で述べよ。

(2)顧客からの注文時の要望にこたえるために行うべきことを,40字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)商品の出荷日付,納入先,製造ロット番号,数量の情報を提供する。

(2)注文を受けた時に商品の在庫状況を確認し,欠品の場合は連絡する。

解説

(1)

(2)

IPA公開情報

出題趣旨

 ITストラテジストには,対象となる業務環境の調査・分析を行い,システム化計画を適切に策定する能力が求められる。
 本問では,卸売業者の物流センタ業務を題材に,物流センタの業務の改善とともに,顧客やメーカの要望にこたえるためのシステム化計画を策定する能力を評価する。具体的には,物流センタの統合によって改善できる業務,業務委託の検討において委託先を決定した要因と委託業務の実施状況を評価する指標,顧客とメーカの要望に対してシステムを活用して行うべきことについて問う。

採点講評

 問1では,卸売業者における物流センタの統合による業務改善について出題した。題意や状況設定はおおむね理解されているようであったが,一部の設問で題意を十分に理解できていないと思われる解答が見られた。
 設問1では,物流センタの統合によって可能となる管理面の改善について解答を求めた。(1)では,在庫の一元管理に着目した解答が多かったが,この設問では在庫数量の管理面を問うているので,安全在庫数量の削減に結びつけるまでの記述がほしかった。(2)では,新たに業務委託することによって改善できる製造ロット番号による出荷管理について解答を求めたが,在庫情報の即時参照による問合せの改善を解答する例も多く見られた。
 設問2(2)では,顧客における検品作業を商品現物の品目と数量を確認する方法から発注伝票と出荷伝票の突合せによる方法に変更するために,出荷時の物流品質をはかる指標として誤納品に関する解答を求めたが,顧客自身の検品作業時間や出荷伝票の作成時間など委託先業者では測ることができない情報を解答している例も多く見られた。
 ITストラテジストは,対象となる業務環境を的確に理解して,改善すべき業務の選定や,その改善に必要な情報の検討を行い,システム化計画を適切に策定できる能力を身につけてほしい。