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技術士の技事録

新米技術士が、IT技術動向・高度資格試験対策等、現役SE向け情報を発信します。

ST H23秋 午後Ⅰ 問1

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アパレル製造・販売企業におけるシステム化構想に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 A社は,ブラウス,ワンピースなど婦人用アウタウェアのアパレル製造・販売企業であり,大都市圏を中心に直営店を展開している。A社の主な顧客は,ファッションに高感度な婦人層である。
 A社では,素材の開発,デザイン性の高さ,高度な縫製といった他社がまねできない技術をアピールしてきた。近頃,大きな価格差のある安価な外国製アパレルに顧客を奪われている。この状況に対応するために,丁寧で迅速な接客サービスで生き残りを図ることにした。
 A社には,商品企画部,製造部などがある。商品企画部は物流センタも運営している。

〔各部の概要〕
 商品企画部は,商品のデザイン,販売計画の立案,店頭価格の設定,素材の調達及び商品の管理を行っている。これまで,素材となる生地の織物や編み物について,紡績メーカ,化学繊維メーカ,生地メーカなどとの連携を強め,天然繊維を活用した生地の他,天然繊維と化学繊維を使った複合素材の共同開発を進めてきた。
 生地メーカには,半年間の発注計画を提示した上で,商品の生産に着手する1か月前に正式発注している。発注計画数量と実際の発注数量は,総数では近いが,生地の種類別・色別の内訳で見ると大きく異なっていることが多い。A社の発注計画を参考にして生地の在庫をもつことが多い生地メーカは,内訳ごとの発注数量の差異で在庫に余剰が生じると,A社に対応を要請することがある。
 製造部は,生地メーカから納入された染色済の生地の裁断から,縫製,仕上げチエック,タグ付け,包装まで,一連の作業を行っている。商品ごとに,販売見込数量をロット生産し,物流センタに入庫する。全直営店には,物流センタから配送する。
 商品企画部は,天然繊維・複合素材の新たな活用方法の提示,ファッション感覚に敏感な顧客を意識した新たな視点によるデザインなどを行っている。企画した商品は全直営店で一斉に販売される。商品を発売してから1週間後の販売数量を,POS情報を用いて分析することで,顧客のファッション感覚にどの程度合致したかが分かる。
 直営店への商品の配分数量は,地域の特性,店舗の大きさなどを考慮して決めている。しかし,商品によっては,ある地域で売れなくても,別の地域ではよく売れていることがあり,合理的に配分することが難しい。配分の結果,来店客が希望する商品が店内に置いていないと機会損失が発生する。一方で,売れ残って不良在庫になることも多く,A社の業績に影響を与えている。

〔直営店での商品販売〕
 直営店では,来店客が希望の商品を見つけられない場合,販売スタッフが,来店客から希望する商品の種類,生地,色,サイズの他,えり・そで・ボタン・ポケットの形状などを聞いて該当する商品を探す。店内に該当商品がない場合は,似た商品があるかどうか,商品のデザイン帳で探したり,商品企画部に問い合わせたりする。その結果,該当商品が見つかれば,色,サイズ及び在庫の有無を物流センタに問い合わせる。また,来店客が取寄せを希望する場合は,物流センタに納期を確認し,手配する。
 現在,直営店が直面している問題が二つある。一つは,商品企画部・物流センタへの問合せ,取寄せの手配に時間がかかっているので,その間は他の来店客へのサービスができないという点である。もう一つは,物流センタから商品を取り寄せても,来店客の希望と異なっていることがあるという点である。
 一方で,商品が売れ残っても,販売価格は全国一律なので,個々の直営店が値引きして販売することはできない。

〔新しい営業方針〕
 A社の経営者は,販売計画に従って生産計画を立案し,商品を販売していく方式では,A社の強みを生かせず,顧客のファッション感覚の変化についていけないと判断し,次のような営業方針を新たに策定した。

  • 生地ごとに,色・デザインに僅かな変化をもたせた多種類の商品を販売する。
  • 新商品は,全直営店で一斉に販売するのではなく,直営店によって種類を変える。
  • 商品の種類の入替えを頻繁に行って売行きを分析し,新たな傾向を探る。

 これらの営業方針に従って,次の対応をとることにした。

  • 短い周期で商品企画を行い,販売見込数量と生地の種類別・色別所要量を設定する。
  • 商品企画から店頭販売までの期間は,長くても2週間以内にする。
  • 商品の生産量は,初回販売分として一定数量を生産し,売行きが良ければ,販売見込数量に達するまで一定数量ずつロット生産する。
  • 生地メーカに対しては,ロット生産に必要な数量だけ小刻みに発注し,短納期での納入を依頼する。
  • 売行きが良くても,当初の販売見込数量を超えて生地の追加発注はしない。
  • 展示方法を工夫するなど,手を尽くしても売行きが鈍い場合は,価格を見直すとともに,その後の生地の発注を止める。

〔トレンド情報の収集〕
 商品企画部は,売行きという売れた結果の数値だけでは顧客の好みの傾向が分からないので,来店客が関心をもつ商品がなくて販売できなかった情報も,販売スタッフから収集する必要があると判断した。これらの情報から,顧客の好みの移り変わりを把握し,商品の企画などに役立たせようというものである。しかし,販売スタッフが営業時間終了後にレポートを作成して商品企画部に提出するのでは,接客時点からの時間がたちすぎてしまい,不確かな情報しか収集できない。そこで,接客中・接客直後に,情報を電子的に収集することにした。
 情報収集については,多くの販売スタッフから,“バックヤードに戻って端末からキーボード入力すると,接客時間がますます少なくなってしまう”という意見が寄せられた。そこで,商品企画部は,簡易な入力方式を採用する必要があると考え,指先で操作できるタブレット型PCを販売スタッフに持たせることにした。さらに,情報の収集だけでなく,来店客とのコミュニケーションツールとしても利用したいと考えている。

〔生地メーカの反応〕
 新しい営業方針を遂行する上では,生地メーカと協調することが大切である。しかし,生地メーカからは,“現在でもA社からの発注内容が発注計画と大きく異なるのに,今後は発注が小刻みになり,しかも納期を指定されては,とても対応できない”と反発された。A社の経営者が生地メーカに対応を懇請した結果,生地メーカは生地の在庫を染色しない状態でもつという条件で引き受けることになった。その他にも,生地メーカからは,“染色作業にはある程度の日数が必要であり,短納期での納入に対応するために,必要な情報を開示してほしい”との要請があった。

 

設問

設問1

 商品の不良在庫の発生を防ぐために,商品企画部が実施できる施策を二つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。

 

解答例

 ・売れていない地域から売れている地域に商品を移送する。
 ・売行きの鈍い商品は値下げして売り切る。

解説

 

設問2

 直営店で使用する予定のタブレット型PCの機能について,(1),(2)に答えよ。

(1)新規商品を開発するためにどのような情報を入力する機能をもたせるべきか。40字以内で述べよ。

(2)販売スタッフの販売活動の効率向上を図るための機能を二つ挙げ,それぞれ35字以内で述べよ。

 

解答例

(1)来店客が希望する商品がなくて販売できなかった情報を入力する機能

(2)・商品の色やサイズごとの在庫の有無と納期を表示する機能
・物流センタに対して在庫の取寄せの手配ができる機能

解説

(1)

(2)

 

設問3

 生地メーカが,生地の在庫を染色しない状態でもつことについて,(1),(2)に答えよ。

(1)生地メーカが短納期での納入に対応するために必要な商品情報を,25字以内で述べよ。

(2)A社が生地の在庫について,生地メーカと協議しておくべき事項を,25字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)生地の種類別・色別の所要量と納期

(2)生地在庫に余剰が発生した場合の対応方法

解説

(1)

(2)

 

IPA公開情報

出題趣旨

 出題趣旨ITストラテジストには,営業戦略の変更に迅速に対応して情報戦略を立案するとともに,情報システムに求められる機能を特定し,システム化計画を通じて実現していく能力が求められる。
 本問では,アパレル製造・販売企業を題材に営業方針の変更に伴って必要となる,サプライチェーンマネジメントを支援するシステム化構想の検討についての能力を評価する。具体的には,商品の不良在庫化を防ぐための施策,販売スタッフが持つタブレット型PCの機能,生地メーカに提供すべき情報や協議しておくべき事項について問う。

採点講評

 問1では,アパレル製造・販売企業におけるシステム化構想について出題した。状況設定は,おおむね理解されているようであった。しかし,営業方針に基づく施策や取引先との交渉事項に関する設問については,題意を理解できていないと思われる解答が多かった。
 設問1は正答率が低かった。現在の販売上の問題点と新しい営業方針から,商品企画部がどのような施策を展開できるのかを,落ち着いて分析してほしかった。問題文中の営業方針への対応内容からそのまま引き写した解答が多かった。
 設問2は正答率が高かった。直営店で使用するタブレット型PCの機能について問うたので,状況をイメージしやすかったからであろう。
 設問3(2)は正答率が低かった。設問にある“生地メーカが,生地の在庫を染色しない状態でもつこと”の意味を理解せずに,不良在庫にならないための方策について解答したものが多かった。
 ITストラテジストは,営業戦略を展開するためにはどのような課題があるのか,また,営業戦略を実現するために必要となる機能は何かを分析する能力を高めてほしい。