技術士の技事録

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ST H23秋 午後Ⅰ 問2

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健康情報システムの導入検討に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 B社は,国内に複数の支社・工場を保有する電子機器メーカである。本社には,人事,総務などを所管する管理本部と,従業員の健康管理の推進を行う健康推進本部がある。管理本部と健康推進本部の方針に基づいて,本社・支社・工場の健康管理室が従業員の健康診断の受診指導と,受診結果に基づいた保健指導を行っている。現在,本社には,全社の人事を管理する人事システムが導入されているが,従業員の健康情報を管理するシステムは導入されていない。そこで,新たにシステムを導入し,従業員への受診指導,保健指導及び健康増進を図る健康指導を強化することにした。
 また,B社にはB健康保険組合があり,従業員及び配偶者を含む家族(被扶養者)を対象に健康づくりの推進及び保険給付をしている。

〔健康診断の現状〕
 健康管理室では,従業員の健康診断を5月から10月の間に実施するための受診計画作成業務を行っている。①〜③の手順で,受診計画を作成し,従業員本人と直属の上司に通知する。

① 健康診断を委託する健診機関との間で,健康診断の受診期間と日別の受診可能人数枠を調整する。

② 調整した日別の受診可能人数枠に個々の従業員を割り当て,受診計画を作成する。

③ 受診計画の作成後,従業員本人と直属の上司に対して,受診予定日を4月中に通知する。

 

 従業員によっては,受診予定日を忘れ,業務予定を入れてしまうなどで,計画した日に受診できない者がいる。従業員から変更希望日を聞いて健診機関と日程を調整する際,受診可能枠の再確保に手間が掛かるので,計画どおり受診するよう指導したい。
 健康診断の診断項目は,全社共通である。現在,健康診断の受診結果,健康管理室で実施した面談記録などは,それぞれの健康管理室において,紙で管理している。一部の健診機関から送付される受診結果の電子データを保存しているが,データベース化はしていない。従業員に異動があると,異動元の健康管理室では,対象従業員の受診結果をとりまとめ,異動先からの要求に応じて提供できるようにしている。

〔健康情報システムの導入〕
 今回,全従業員の健康診断の受診結果,健康管理室で実施した面談記録,成人病予防のために実施した特定保健指導などの情報を管理する健康情報システムを本社に導入する。本社にはデータベースと業務サーバを設置し,それぞれの健康管理室には端末を配備する。保有する機能は,次のようなものである。

① 健康診断管理:健康診断の予約,取消し,受診実績,受診結果を登録する。

② 健康診断情報分析:健康診断情報の集計や傾向分析を行う。

③ 保健指導情報管理:面談記録や特定保健指導結果を管理する。

 

 従来,健康管理室で行っていた受診計画作成業務は,健康診断管理に同等の業務機能があるので,現行の手作業をそのままシステム化する。また,従来,紙で管理していた健康診断の受診結果と面談記録は,システム導入時に,過去5年間分をデータベースに登録する。

〔健康管理室の保健指導・健康指導〕
 健康管理室では,受診結果情報に基づいて保健指導を行う。再検査が必要な従業員を抽出し,該当する従業員には,面談を行い,再検査を指導する。特に,成人病,又はその疑いがあると診断された従業員は,特定保健指導の対象者として管理する。対象者については,定期的にフォローすることになっているが,業務多忙を理由にフォローを受けていない者もいる。フォローをしたときの特定保健指導情報は,健康保険組合に送付している。
 最近,健康管理室には,成人病予防や成人病に対する健康相談。メンタル相談に来る従業員が増えている。今回,従業員からの相談を,健康相談,メンタル相談の2種類に分類して,面談記録としてデータベースに登録する。健康推進本部では,全国にある健康管理室の面談記録を確認する。
 体重・体脂肪率と運動量には関係があるといわれており,その情報を記録することで,健康指導の新たなメニューとして,従業員への指導に取り組む計画である。今回,それぞれの健康管理室に,体重,体脂肪率,血圧などが計測できる機器を設置し,従業員には歩数計を配布する。個々の従業員は,業務用PCや携帯電話などから,データベースに毎日の歩数を登録する。特定保健指導が必要な従業員には,体重,体脂肪率,血圧の毎週の測定結果を記録させ,定期的な面談の情報として利用する計画である。

〔管理本部の取組み〕
 今回導入する健康情報システムを活用し,管理本部は,全従業員を対象に,健康に関する社内セミナの開催や情報提供を行う。

① 健康推進本部と連携して,成人病の予防,メンタルヘルスなどの社内セミナを開催する。セミナのテーマは,データベースに登録されている情報を参考にして検討する。

② 特定保健指導の対象者の参加率を高めるために,医療費削減に関する情報を提供する。

 

〔B健康保険組合の取組み〕
 最近では,従業員数が横ばい状態で,保険料収入が伸び悩んでいる。一方,加入者の高齢化などによって,組合が支払う医療費は増加しており,医療費の削減対策が必要である。医療費の削減対策として成人病予防を重視し,特定保健指導の強化によって従業員及び被扶養者の医療費を削減したい。現在は,医療費と特定保健指導の関係について評価はできていないので,特定保健指導に積極的に取り組めていないものと考えている。
 従業員の配偶者に対する成人病予防は,配偶者の健康診断の受診と健康改善に関する情報を提供することによって行う。配偶者には健康診断の受診案内を行い,希望者が受診している。  健康保険組合では健康増進につながる情報を3か月ごとに資料として発行し,従業員に提供している。資料には,季節ごとの食材を使用した献立の情報,成人病予防に効果があるといわれている食事や運動に関する情報,ストレス対策情報などが掲載されている。これらの情報は,健康改善の参考になるという,従業員からの意見が多い。
 配偶者にも見てもらいたいが,資料を家に持ち帰らない従業員が多い。
 現在,健康保険組合の提供する情報は,会社のイントラネットで見ることができるが,インターネットによる情報提供の環境はないので,従業員と配偶者は自宅からアクセスすることはできない。今回,情報セキュリティを考慮したインターネット環境を構築し,従業員や配偶者へ,健康保険組合から情報を提供できるようにする。最近,健康保険組合のシステムは更新されており,従業員の配偶者の健康診断の受診結果はデータベース化されている。B社では,今回の健康情報システムの導入によって,健康指導の取組みを強化し,“働きやすい会社”を目指していくことにしている。

 

設問

設問1

 健康情報システム導入後の健康診断に関する業務について,(1),(2)に答えよ。

(1)従業員を受診予定日に受診させるために行うべきことについて,40字以内で述べよ。

(2)健康管理室において,削減可能な業務を,30字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)受診計画に基づき,一定期間前に従業員本人及び直属の上司に受診案内を行う。

(2)異動した従業員に関する健康診断受診結果のとりまとめ

解説

(1)

(2)

 

設問2

 特定保健指導に関して行うべきことについて,(1),(2)に答えよ。

(1)特定保健指導の対象者に対して,健康情報システムを利用して健康管理室が新たに行うべき指導について,40字以内で述べよ。

(2)従業員の配偶者の健康改善を行うために,従業員の配偶者に対して,健康保険組合が提供すべき情報について,30字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)体重と体脂肪率,血圧の測定結果と,毎日の歩数の記録に応じた指導を行う。

(2)健康診断の受診結果に基づいた成人病予防に関する情報

解説

(1)

(2)

 

設問3

 健康への取組みについて,(1),(2)に答えよ。

(1)管理本部と健康推進本部が連携して,社内セミナのテーマを検討するときに参考にするとよいと考えられることについて,30字以内で述べよ。

(2)会社が行う特定保健指導の取組みを推進するために,健康保険組合が行うベきことについて,40字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)面談記録に占める健康相談とメンタル相談の比率

(2)特定保健指導情報と医療費の関係を分析し,指導の効果を評価する。

解説

(1)

(2)

IPA公開情報

出題趣旨

 出題趣旨ITストラテジストには,対象となる業務の調査・分析を行い,個別システム化計画を適切に策定する能力が求められる。
 本問では,従業員の健康情報の共有が行われていない企業を題材に,新システムの活用による問題の解決,業務の見直しと情報活用に関する検討についての能力を評価する。具体的には,健康診断に関わる業務の改善,保健指導に関わる新たな業務の検討と提供すべき情報,従業員の健康増進につながる情報の活用について問う。

採点講評

 問2では,健康情報システムの導入検討について出題した。題意や状況設定はおおむね理解されているようであったが,一部の設問で題意を十分に理解できていないと思われる解答が見られた。
 設問1(2)では,健康情報システム導入に伴い削減可能な業務について解答を求めたが,受診計画作成業務のようにシステム化することで軽減される業務を解答している例も多く見られた。
 設問3では,健康への取組みについて,(1)社内セミナのテーマ検討における健康情報システムのデータベスの活用と,(2)特定保健指導の推進のために健康保険組合が会社に対して行うべきことについて,解答を求めた。(1)では,データベースに登録されている面談記録の健康相談とメンタル相談という活用すべきデータは理解できていたが,データの比率や分析などといったテーマ検討に関する記述が不足している解答も多く見られた。(2)では,健康保険組合が会社に行うべき特定保健指導と医療費を分析して効果を評価することについて解答を求めたが,健康保険組合が組合員に対する情報提供についての誤った解答も多く見られた。
 ITストラテジストは,対象となる業務の調査・分析を行い,ITを活用することで可能となる業務の改善や新たなサービスにおいて誰にどのような情報を提供すべきか検討を行い,個別システム化計画を適切に策定する能力を身につけてほしい。