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技術士の技事録

新米技術士が、IT技術動向・高度資格試験対策等、現役SE向け情報を発信します。

ST H23秋 午後Ⅰ 問3

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測定機器メーカにおける業務改革に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 C社は,センサや計測機器などを製造している測定機器メーカである。顧客は,製造業や建設業など多くの業種にまたがっている。C社の強みは,様々な条件下でも安定稼働する測定機器の信頼性と機能の高さである。ここ数年,測定機器単体の利益率が減少していることから,測定機器と情報システムを組み合わせた監視システムや制御システムなどのソリューション事業にも進出している。
 最近は,SIベンダが,測定機器を組み込んだ情報システムによる業務改善案をC社の顧客に提示し,引き合いにつなげており,C社の競合相手となっている。また,C社が獲得した案件でも,システム開発工数が見積工数を超えてしまい,利益が得られないケースが増えてきた。

〔営業活動の現状〕
 C社の案件は,顧客からの引き合い,提案依頼,提案書の提出やプレゼンテーションなどの段階を経て,受注へとつながっていく。
 優秀な営業担当者は,顧客との信頼関係を築き,C社の測定機器を活用したソリューションの導入事例などを紹介し,引き合いにつなげている。また,提案前に顧客のキーパーソンに予算額を確認することで,顧客の予算に合わせたソリューションの提案を作成している。しかし,多くの営業担当者は,ソリューションの営業活動が不十分で,引き合いにつながらなかったり,案件を獲得できなかったりしている。また,作成した提案書を顧客の意思決定者に説明するまでに至らず,担当者にとどまり,失注してしまうこともある。
 技術担当者は提案書を作成し,受注後,プロジェクトマネージャとしてシステム開発プロジェクトを実施する。顧客からは,“測定機器の機能説明を中心とした提案ではなく,当社の業務要件とシステム導入の投資効果を十分に検討してほしい”という要望を受けている。

〔案件管理の問題点〕
 C社は,数年前に,営業部門と技術部門間の情報共有のために案件管理システムを導入し,顧客から引き合いがあった案件を,営業担当者が順次登録している。しかし,技術部門ではシステムの使い勝手が悪いこともあって,営業部門との情報共有は進んでいない。
 案件の進歩状況は,営業担当者が訪問日時や訪問結果などを文章で記述しているだけである。案件の受注確度も登録しているが,確度の判断は営業担当者任せであり。精度が低い。営業担当者が技術担当者に提案書の作成を突然依頼し,期限までに提出できないこともあった。技術部門からは,“案件の進歩の管理を強化すべきではないか”という意見が多い。

〔技術部門の問題点〕
 屋外で測定機器を利用する場合や24時間稼働を要請される場合は,小規模なシステム開発プロジェクトでも高信頼性が求められ,テスト工数が増大する。また,顧客が測定機器にあまり詳しくなかったり関係者が多すぎたりして,システムの仕様がなかなか決まらない場合は,設計工数が増大する。ベテランの技術担当者は,システム開発プロジェクトの開始前に工数が増大しそうな作業を洗い出し,仕様を決めるために関係者によるレビューを行ったり,ハードウェアのテストを先行させたりして,リスクに応じた対応策を準備している。
 顧客にとって魅力があり,競争に強いソリューションを作成するには,技術部門全体としての総合力が不足している。顧客の業務要件に合致し,市場競争力のある測定機器を盛り込んだ提案書を作成できるようになるには,個々の技術担当者が業務経験を積む必要がある。若手の技術担当者は,サーバから検索した過去の提案書を流用し,提案書を作成している。作成された提案書については,技術部門の各グループ長が提案内容や見積内容を精査し,営業部門へ提出している。しかし,提案件数が多く,グループ長は十分に確認できず,若手の技術担当者への指導も不十分である。

〔業務改革案〕
 C社の社長は,受注案件の増大と利益の確保を目指して,業務改革チームを立ち上げた。業務改革チームは,優秀な営業担当者の活動や失注事例などのノウハウを集約し,営業活動の必須項目と推奨項目を定義した表1の案件管理プロセスを作成した。
 案件管理システムでは,この定義に従って,営業活動の実施状況を登録し,必須項目の実績に応じて,案件の進歩を表1の5段階で管理することにした。
 さらに,システム開発プロジェクトの利益確保のため,見積時に若手の技術担当者でもリスクを評価できるチェックシートを導入した。そして提案書と一緒に提出されたチェックシートで,リスクのチェック状況をグループ長が確認することにした。

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設問

設問1

 営業担当者が引き合いを得るために,顧客に提供すべき有効な情報を二つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。

 

解答例

・測定機器を組み込んだ情報システムによる業務改善案
・C社の測定機器を活用したソリューションの導入事例

解説

 

設問2

 技術部門の業務改革について,(1),(2)に答えよ。

(1)受注につなげるために,提案書に盛り込むべき内容を,顧客の視点及びC社の視点から,それぞれ30字以内で述べよ。

(2)システム開発プロジェクトの利益確保のために,チェックシートに盛り込むべき,チェック項目を二つ挙げ,それぞれ20字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)顧客の視点:顧客の業務要件とシステム導入の投資効果
C社の視点:顧客の業務要件に合致し,市場競争力のある測定機器

(2)・システムに要求される信頼性の高さ
・システム仕様の確定の状況設

解説

(1)

(2)

 

設問3

 C社のノウハウを集約した案件管理プロセスについて,(1),(2)に答えよ。

(1)表1中の推奨項目の  a    b  に入れる活動を,それぞれ20字以内で述ベよ。

(2)推奨項目の実施状況も登録することで,現在の案件管理システムを更に改善する効果が見込まれる。どのような効果か,30字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)a:キーパーソンに予算額を確認する。
b:意思決定者に提案書を説明する。

(2)推奨項目の実施状況から受注確度を客観的に判断できる。

解説

(1)

(2)

IPA公開情報

出題趣旨

 出題趣旨ITストラテジストには,現状の業務を分析し,業務改革方針に合致した施策を作成する能力が求められる。本問では,機器販売事業からソリューション事業に進出している測定機器メーカの業務改革を題材に,受注案件を増大させ,利益を確保するための施策を作成する能力を評価する。具体的には,引き合いを増やすために顧客に提供すべき情報,技術部門の提案書作成とリスク管理の改善策,営業活動と案件管理の改善策について問う。

採点講評

 問3では,測定機器メーカにおける業務改革について出題した。状況設定は,おおむね理解されているようであった。
 設問1では,引き合いを得るための有効な情報について出題した。おおむね理解されているようであったが,“多くの業種の顧客がいること”などのようにC社の一般的な評価情報を解答している例も見られた。顧客情報が不足している中でC社のソリューションに関心をもってもらうためには,どのような情報が有効かを理解してほしい。
 設問2(1)では,受注につなげるために提案書に盛り込むべき内容についての解答を求めたが,プロジェクト開始後のC社のリスク管理の観点から解答している例も見られた。(2)では,リスクのチェック項目についてはおおむね理解されていたが,“先行テストの実施”などのようにリスク評価と対応策を混同している解答も見られた。
 設問3(1)では,案件管理プロセスについてはおおむね理解されていたが,案件の引き合いから契約交渉までの各段階の進捗に応じた活動と関係ない解答も見られた。案件獲得の確度を高めていく時系列な営業活動を理解できていなかったと思われる。(2)では,推奨活動の実施状況と受注獲得の確度の関係をつかめなかった解答も散見された。
 ITストラテジストは,現状業務を十分に理解した上で,業務改革方針に合致した実践的な業務改善案を作成できるようになってほしい。