技術士の技事録

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ST H25秋 午後Ⅰ 問2

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小売業における事業拡大計画の立案に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 B社は,大手食品小売業者である。B社は,大都市近郊に出店して,事業を拡大してきた。しかし,ここ数年は長引く景気低迷の影響を受けて,業績不振が続いている。

〔B社の現状と課題〕
 消費者のライフスタイルの多様化,少子高齢化の進行によって,顧客の購買行動が変化している。B社は,POS売上情報を分析して商品企画の立案,品ぞろえの強化を図り,売上を伸ばしてきた。しかし,ここ数年はPOS売上情報分析に基づいた商品企画,品ぞろえが販売実績につながらず,販売予測を下回ることもあった。また,広告チラシによる特売・新商品の宣伝を行っても,来店客数の増加にはつながるが,販売拡大には結び付いていない。社内からは,“従来のPOS売上情報分析からは顧客の顔が見えてこないので,顧客のニーズに合った商品の品ぞろえができない”という声が出ている。

〔POS売上情報分析の結果〕
 B社では,これまでのPOS売上情報分析から,売れ筋商品に関して,次のような特徴があることが分かっている。

  • 平日の夕方からやや遅い時間帯にかけては,品質・味にこだわった食材,総菜が売れている。
  • 週末は,大きな容量の包装で,高い価格帯の食材が多く売れている。
  • 週末に地域のイベントが開催されると,イベントに関連する商品がよく売れる。
  • 地元の農家・企業から仕入れた地元名産の農産品,加工品などは,コンスタントに売れている。

〔プライベートブランド商品の開発〕
 B社は,数年前から提携先企業と共同で,自社のプライベートブランド商品(以下,PB商品という)を開発している。PB商品開発のために,店頭で新商品に関するアンケートを行い,顧客の意見・要望を参考にすることがある。これまでのアンケートでは,家族団らんや友人が集まるパーティなど,顧客が新商品を利用したい場面に関する意見と,味や容器の形状などの新商品の仕様に関する要望があった。
 PB商品開発では,商品開発システムを提携先企業と共同で利用しており,契約数量・容量など調達に必要な情報を管理しているが,開発に必要な情報は管理できていない。

〔ポイントカード会員の特徴〕
 B社は,集客力向上のために,数年前からポイントカード制度を導入している。ポイントカード会員となるための手続は,顧客が店舗のサービスカウンタで申込書に氏名・住所・生年月日・性別・職業・家族構成・電話番号・メールアドレスを記入し,その場でポイントカードを受け取る。申込書の内容は,ポイントカードシステムに入力される。ポイントカードシステムでは,ポイントカード会員に関する属性情報と購買履歴情報を管理している。現在,ポイントカードシステムから得られている情報は次のとおりである。

  • 顧客に占めるポイントカード会員の割合は,約7割である。
  • ポイントカード会員の構成比は,団塊ジュニア世代と呼ばれる30代後半〜40代前半の主婦と,65歳以上の主婦の占める割合が高い。
  • 主婦以外のポイントカード会員としては,レストランなどを経営している自営業者,農業従事者が多い。

 B社では,ポイントカード会員にはポイント付与の他に,購入金額に応じて配達無料サービスなどを提供している。レストランなどを経営している自営業者は,卸売業者からの食材の仕入れ以外にB社から購入することも多いので,自営業者の会員には,早朝に食材を買出しに来る手間が省ける早朝お届けサービスを実施している。B社はこれらの特典以外に,ポイントカード会員全員に対して,タ食やパーティの献立の参考となる。キャンペーン・特売の案内をDM(ダイレクトメール)で送付したり,会員限定価格などの情報を電子メールで提供したりしている。

〔市場調査結果の概要〕
 B社では販売拡大につなげるために,外部企業に市場調査を依頼した。調査結果の概要は次のとおりである。

  • 大都市近郊では,2世帯,3世帯の同居は減少しているものの,高齢の両親の近隣に子供の家族が住居を構える傾向がある。
  • 一般世帯では収入が伸び悩んでいる傾向があり,必要に応じて両親からの援助を受けている。団塊ジュニア世代の世帯は,日常生活ではぜいたくはしていないが,食生活に関してはこだわりをもっている。
  • 両親の高齢化が進む中で,週末に両親の家を訪問して,両親と一緒に過ごす子供の家族が増えている。
  • 地域経済の活性化策として,物産展など地域のイベントの開催が増えており,全員そろって参加する家族が多い。
  • 農業従事者は,地元名産の農産品を活用して,品質にこだわった食材・調味料を用いた料理を物産展などの地域のイベントで提案している。
  • “地産地消”をアピールしたメニューを提供するレストランが増えており,消費者の関心を集めている。
  • 団塊ジュニア世代の主婦は,タ食やパーティの献立を決めるときに,携帯電話又はスマートフォンで電子メールの配信情報及びSNSのコミュニティ上の情報を検索し,参考にしている。

〔新たな購買分析データ活用による事業拡大計画の概要〕
 B社では,POS売上情報分析に加えて,ポイントカード会員の購買分析データを活用し,顧客二ーズに対応した事業拡大計画を取りまとめた。

  • 年代・家族構成・職業を基に,ポイントカード会員から,65歳以上の主婦,団塊ジュニア世代の主婦,レストランなどを経営している自営業者,農業従事者の四つのグループを抽出する。グループごとに想定されるライフスタイルに基づいて,各グループの二ーズをきめ細かく分析する。
  • POS売上情報,ポイントカードシステムから得られている情報及び市場調査結果を基に,購入目的と購入商品の仮説を立てる。グループごとの,何のためにその商品を選択したかという“購入目的”と,目的に対応してB社で売れている“購入商品”の仮説は,表1のとおりである。

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  • ポイントカード会員の購買分析を行って仮説を検証し,商品の品ぞろえの強化と販売促進を行う。
  • ポイントカード会員の購買分析から,売れ筋商品と,顧客がそれとともに購入した商品をグループ別に把握し,日頃から携帯電話又はスマートフォンで情報収集を心掛けているグループに対して商品の情報をDM又は電子メールで提供する。
  • ポイントカード会員の来店頻度,購入金額を時系列で把握し,来店頻度の高い顧客購入金額の多い顧客に対しては,クーボンなどの特典を提供する。
  • 来店頻度,購入金額が減少傾向にある顧客に対しては,来店を促す情報をタイムリに発信し,販売促進を行う。
  • SNSにコミュニティを立ち上げ,親戚・友人を集めたパーティ,地域のイベントなど様々な場面での食事の献立・新商品を提案し,消費者の意見を収集する。
  • 商品に関する顧客のニーズを把握し,その情報を商品開発システムに反映させ,顧客のニーズに合った商品をPB商品として開発する。

 

設問

設問1

 表1中の  a    d  に入れる購入目的と購入商品について,それぞれ25字以内で述べよ。

 

解答例
  1. 週末に訪問してくる子供の家族との食事
  2. 大きな容量の包装で高い価格帯の食材
  3. “地産地消”をアピールしたメニューの提供
  4. 地元名産の農産品や加工品などの食材
解説
  1. X
  2. X
  3. X
  4. X

設問2

 ポイントカード会員に対する販売促進活動として,DM又は電子メールを活用して新たに提供すべき情報について,(1),(2)に答えよ。

(1)全てのポイントカード会員に共通して提供する情報を,30字以内で述べよ。

(2)団塊ジュニア世代の主婦に提供する情報を,30字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)週末に開催される地域のイベントに関連する商品

(2)売れ筋商品とそれとともに購入されている商品

解説

(1)

(2)

 

設問3

PB商品の開発を強化するための施策について,(1),(2)に答えよ。

(1)店頭でのアンケートに加えて,顧客のニーズの収集に適した方法を,30字以内で述べよ。

(2)強化策の一つとして,これまでに要望として出ている。商品開発システムに追加すべき二つの情報を,それぞれ20字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)SNSにコミュニティを立ち上げて意見を集める。

(2)・顧客が新商品を利用したい場面
・味や容器の形状などの新商品の仕様

解説

(1)

(2)

IPA公開情報

出題趣旨

 ITストラテジストには,企業の経営戦略に基づいて,ITを活用した全社業務改革の基本戦略を策定して提案し,推進する能力が求められる。
 本問では,小売業における新たなデータ活用による事業拡大計画を立案し,施策を推進する能力を評価する。具体的には,POS売上情報やポイントカードシステムの情報と市場調査の結果から想定される顧客ごとの購入目的と購入商品や,ポイントカード会員の顧客分析から販売促進活動として行うDM(ダイレクトメール)や電子メールの情報提供の内容を問う。また,プライベートブランド商品開発強化のための施策について,必要な情報収集方法と商品開発システムに追加する情報内容を問う。

採点講評

 問2では,小売業における新たなデータ活用による事業拡大計画の立案とその施策について出題した。題意や状況設定は,おおむね理解されているようであった。
設問1のaでは,65歳以上の主婦層における,週末に訪問してくる子供家族との食事を解答の主旨としたが,一般的な状況を記述するなど,出題の意図を十分に理解していない解答があった。cでは,レストランなどを経営する自営業者の購入目的を問うたが,具体的な仮説に結びつかない解答が散見された。購買分析データ活用による事業拡大計画に結びつく具体的な仮説を,状況設定からしっかり読み取ってほしかった。
 設問2(1)では,ポイントカード会員に共通して提供する情報を問うたが,特定のグループの顧客に対して提供する情報についての解答が散見された。(2)では,既に提供している情報内容や消費者の意見を収集するための施策としての情報提供内容を誤って解答した受験者が多かった。状況設定と出題趣旨を十分に理解してほしかった。
 設問3(2)では,強化策の一つとして,これまでに要望としている,商品開発システムに追加すべき情報を問うたが,具体的な情報ではなく抽象的な解答が一部に見られた。
 ITストラテジストは,企業の経営戦略に基づいて,ITを活用した全社業務改革の基本戦略の策定・提案及び推進を行う能力を高めてほしい。