技術士の技事録

新米技術士が、IT技術動向・高度資格試験対策等、現役SE向け情報を発信します。

ST H26秋 午後Ⅰ 問2

◀️ 前へ設問へ次へ ▶️

小売業におけるリフォーム事業の拡大戦略に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 M社は,全国の大都市近郊に出店している大手ホームセンタである。地域ごとに,中核となる大型店舗と,数店舗のM社が標準として定める売場面積をもつ店舗(以下,標準型店舗という)で,家具・照明などのインテリア商品,日用雑貨,DIY用品,資材,園芸用品などを販売している。M社では,国内外の仕入業者からの大量仕入れで仕入原価を抑えることによって,低価格で商品を提供し,事業を拡大している。

〔リフォーム事業の概要〕
 M社では,数年前から大型店舗でキッチン・バス・トイレ・リビング・寝室などの小規模な増改築を中心とするリフォーム事業を展開している。
 店内には,消費者のライフスタイルに合わせた,和風,洋風などの様々な仕様のリフォーム展示ブースを複数設置している。
 大型店舗には,設計に関して責任を負う社員(以下,設計責任者という),施工管理に関して責任を負う社員(以下,施工責任者という),建築関連の知識をもつ社員(以下,リフォーム担当者という)及びインテリア関連の知識をもつ社員(以下インテリア担当者という)を配置している。
 リフォームに関する客からの相談・問合せからリフォーム完了までの流れは,次のとおりである。

① リフォームに関する客からの相談・問合せは,大型店舗の店頭又は電話でリフォーム担当者が受ける。その際,客の住所,氏名,電話番号,住宅に関する情報などの属性情報,及びリフォーム箇所や希望などのリフォームニーズを確認し,設計責任者の支援を受けて,相談・問合せに回答する。リフォームニーズが具体的でない場合は,客にリフォーム展示ブースを見ることを勧め,具体化している場合は,リフォーム担当者と設計責任者が客先に出向いて現場を調査する(以下,訪問調査という)。このとき,リフォームニーズに合った仕様のリフォーム展示プ ースの見学を勧めることがある。

② 設計責任者は,リビングや寝室のリフォームの場合など必要に応じてインテリア担当者と相談して,リフォームニーズに合ったリフォームプランを作成する。リフォーム展示ブースを見学した客に対しては,客の具体的な声を聞いてリフォーム内容を設計できるので,客の満足度が高い。

③ 施工責任者は,設計段階で地域の工務店,建築事業者及び土木事業者(以下,これら3者を総称して施工事業者という)を選択し,施工事業者と調整して見積書を作成する。

④ リフォーム担当者と設計責任者は,設計したリフォームプランを客に提案して,契約を結ぶ。

⑤ 工事開始後,リフォーム担当者と施工責任者は,客先に出向いてリフォームプランと現場の状況を見比べ,工事の進歩状況を確認する。工事完了後は,客に工事の内容を確認してもらう。

⑥ 工事完了後に,実施したリフォームの仕様に合ったインテリア商品に関する問合せを客から電話などで受けることがある。その場合は,リフォーム担当者が客先に出向き,商品のカタログ,商品が掲載されているチラシを見せて,来店を勧める。客が来店したら,インテリア担当者が客のニーズに合ったインテリア商品を推奨する。

 

〔リフォーム事業の課題〕

  • リフォーム担当者は,設計責任者とともに客との打合せを行ったり,施工責任者とともに工事現場を訪問したりする。そのための,設計責任者,施工責任者との日程調整に手間取る場合がある。
  • 施工事業者ごとに,それぞれ対応できるリフォームの仕様が異なるので,施工責任者は,リフォーム案件ごとに,施工が可能かどうか,工事に必要な作業員数,工事の日程・費用を施工事業者に問い合わせている。リフォーム案件が重なった場合は,施工責任者は施工事業者の選定と調整に時間が掛かり,客から苦情を受けることがある。
  • 相談・問合せをした客は,休日に来店してリフォーム展示ブースを見学することが多い。客からは,リフォーム展示ブースに来る予定日時を事前に知らせてもらうことはないので,設計責任者,インテリア担当者は適切に対応できない場合がある。
  • 施工後の写真がないので,インテリア担当者は工事完了後に来店した客に,リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨できていない。

〔リフォーム事業の拡大戦略〕
 近年,消費者のリフォーム需要が増加していることから,M社では,リフォーム事業の拡大を決定し,次のような戦略を立案した。

  • 客に対して,大型店舗をもっているM社の強みを生かしたリフォームを提案する。
  • 客の利便性向上と業務の効率向上を両立できるようにして,全店舗及びWebサイトを活用したリフォーム事業を展開する。
  • 標準型店舗にもリフォーム担当者を配置し,大型店舗の設計責任者,施工責任者と連携したリフォーム対応を行う。
  • 全店舗のリフォーム担当者と大型店舗の各責任者などがリフォームに関する情報を連携するためのリフォーム管理システムを構築する。リフォーム担当者には写真撮影が可能なタブレット端末を配布する。
  • 施工責任者が迅速に施工事業者を選定し,リフォーム案件ごとの見積りを作成するための施工事業者選定システムを構築する。施工事業者は,施工に関する情報及び施工責任者からの要請に対する回答を,施工事業者選定システムに登録する。

〔リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務〕
 リフォーム事業の拡大戦略では,新たに次のような業務を実施する。

  • Webサイトからリフォームの相談・問合せを受けるために,必要な情報・内容を客に入力してもらう。客から店頭又は電話で相談・問合せを受けた場合は,リフォーム担当者がリフォーム管理システムに必要な情報・内容を入力する。
  • Webサイトからの相談・問合せに対しては,客の居住地域にある最寄りの店舗のリフォーム担当者が対応する。リフォーム担当者は,大型店舗の設計責任者のアドバイスを得て,客の相談・問合せに電子メール又は電話で回答し,訪問調査の日程を調整する。
  • リフォーム担当者は,訪問調査を行い,タブレット端末で撮影した現場写真と調査結果をリフォーム管理システムに登録する。また,客に対しては大型店舗のリフォーム展示ブースの見学を勧める。設計責任者は,相談・問合せの内容によって,必要に応じて訪問調査を行う。
  • 設計責任者とインテリア担当者は,客の来店時にリフォーム管理システムに登録されている情報を参照して,リフォームニーズに合った仕様のリフォーム展示ブースを案内し,リフォームプランを提案する。設計責任者は,現場写真,調査結果及び客の具体的な声を基に,リフォームニーズに合ったリフォーム内容を設計する。
  • 施工責任者は,施工事業者選定システムを活用して迅速に施工事業者を選定し,見積りに必要な情報を入手して見積書を作成する。
  • 工事期間中は,リフォーム担当者が客先に出向き,タブレット端末を活用して施工責任者と連携して工事を管理する。施工責任者は,必要に応じて客先に出向き。工事内容を確認する。
  • 工事完了後に,客からWebサイト又は電話でインテリア商品に関する問合せを受けた場合は,リフォーム担当者がインテリア担当者と相談した後,客先に出向いて,タブレット端末で具体的な商品を推奨し,来店を勧める。

 

設問

設問1

 リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務のうち,リフォーム担当者の業務について,(1),(2)に答えよ。

(1)訪問調査を行って,客がリフォーム展示ブースの見学を希望した際に行うことを,35字以内で述べよ。

(2)インテリア商品に関する問合せを受けて,客先に出向いたとき,タブレット端末を用いて行うことを45字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)リフォーム展示ブースの見学予定日時を決めて登録する。

(2)リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨する。

解説

(1)

(2)

 

設問2

 リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務で,リフォーム管理システムが取り扱う情報について,(1),(2)に答えよ。

(1)設計責任者が客の相談・問合せに対してアドバイスするときに,Webサイト及びリフォーム担当者から引き継いで参照する情報を,二つ答えよ。

(2)施工責任者がリフォーム担当者と連携して工事を管理する際に,リフォーム担当者と共有して参照する情報を25字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)・属性情報
・リフォームニーズ

(2)写真撮影した工事の内容と進捗状況

解説

(1)

(2)

 

設問3

 施工責任者が,施工事業者選定システムで迅速に施工事業者を選定して見積りをするために,施工事業者が実施すべきことについて,(1),(2)に答えよ。

(1)施工事業者が施工事業者選定システムに事前に登録する情報を,25字以内で述べよ。

(2)施工責任者からの要請に対して施工事業者が回答する内容を,25字以内で述べよ。

 

 

解答例

(1)施工が可能なリフォームの仕様

(2)工事に必要な作業員数,工事の日程・費用

解説

(1)

(2)

IPA公開情報

出題趣旨

 出題趣旨ITストラテジストには,業種ごとの事業特性を反映してITを活用した事業戦略の策定を支援する能力が求められる。
 本問では,小売業におけるリフォーム事業の拡大戦略を題材に,新たな業務に必要な仕組みを検討する能力,及び必要な情報を特定する能力を評価する。具体的には,1.新たな業務でリフォーム担当者が実施すること,2.Webサイト,リフォーム担当者と大型店舗の各責任者との間で取り扱う情報,3.施工責任者が迅速に施工事業者を選定するための必要な情報について問う。

採点講評

 問2では,小売業でのリフォーム事業の拡大戦略における新たな業務要件の策定について出題した。一部の設問で題意や状況設定を十分に理解できていないと思われる解答が見られた。
 設問1(1)は,訪問調査の際にリフォーム担当者が新たに実施すべきことを問うたが,正答率は低かった。店舗へ見学に来た客への対応ができない場合があるという現状の課題を踏まえた上での具体的な施策に気付いてほしい。
 設問2(2)は,工事期間中に工事を管理する際に施工責任者がリフォーム担当者と共有する情報について問うたが,“リフォームの仕様”など工事を開始する前に共有しておく情報に関する解答が見られた。
 設問3は,施工事業者選定システムで施工業者が実施すべきことについて問うたが,正答率は高かった。題意はおおむね理解されているようであった。
 ITストラテジストは,業種ごとの事業特性を反映してITを活用した事業戦略の策定を支援し,新たな業務要件を定義する能力を高めてほしい。